ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci.　第64巻　第2号　通巻 第292号

概要

教育医学 J.Educ.Health Sci.　第64巻　第2号　通巻 第292号

高齢ボランティアによるスクエアステップの指導が女性高齢者の下肢機能に与える影響―運動指導の専門家による指導との比較検討―表１下肢機能総合得点によるマッチング前のサークル群，教室群の基本属性および下肢機能サークル群教室群n Mean±SD n Mean±SDP値年齢，歳2071.5±4.57872.0±4.80.692身長，cm20152.4±5.778151.1±4.70.296体重，kg2052.9±6.27853.9±8.90.637Body mass index，kg/m22022.5±2.37823.6±3.80.127教育年数，年2012.2±1.57811.6±1.90.246出席率，％2079.5±13.87891.7±9.40.001開眼片足立ち時間，秒2045.4±18.17833.8±22.10.0215回椅子立ち上がり時間，秒206.8±1.0787.6±1.70.008Timed up and go，秒206.0±1.1786.0±1.10.9915 m通常歩行時間，秒203.8±0.6783.5±0.60.056SD : standard deviationにおける運動サークルと運動教室では対象者の募集方法が異なり，SSEサークルでは回覧板や高齢ボランティアによる呼びかけによって，SSE教室では広報誌や市職員による呼びかけによって対象者を募集していた．こうした募集方法の違いにより，対象者の特徴に群間差が生じた可能性がある．運動実践が身体機能に与える影響は，身体機能水準によって異なると報告されているため1,22,25），本研究で5,16）は先行研究と同様にベースラインにおける身体パフォーマンステストの測定値から対象者の下肢機能を評価し，マッチングをおこなった．各対象者の下肢機能は，ベースラインで実施した4つの測定項目の値から各項目のZスコアを算出し，4項目の平均値（下肢機能総合得点）から評価した．Zスコアの算出式は，測定値が高いほど良好な項目は（各対象者の測定値?母集団の平均値）／（母集団の標準偏差）とし，測定値が低いほど良好な項目は（各対象者の測定値＋母集団の平均値）／（母集団の標準偏差）とした．Zスコアの算出に用いる母集団の平均値，標準偏差には，笠間市内で2009年から2015年までに開催された体力測定会に参加した女性高齢者406名のデータを用いた．尚，本測定会は，笠間市の住民基本台帳から系統的抽出法によって抽出された地域在住高齢者（SSEサークルに参加していない者）に対して実施した．サークル群，教室群の全対象者の下肢機能総合得点を算出した後，サークル群の各対象者の下肢機能総合得点±1標準偏差（1標準偏差は0.508）の範囲におさまる得点の対象者を教室群から抜き出した．範囲におさまる対象者の人数は，最小6名，最大47名であり，抜き出した後に，表計算ソフト（Microsoft Office Excel，Microsoft）のRAND関数を用いて無作為に値を割り振り，最も大きい値が振られた者を教室群の分析対象者とした．マッチングの結果，サークル群20名，教室群20名が最終的な分析対象者となった．マッチングにより，下肢機能の測定項目の有意な群間差は消失した．7．統計解析サークル群と教室群の基本属性，下肢機能の比較には，対応のないt検定を用いた．SSEサークル，SSE教室への参加が高齢者の下肢機能に与える影響を検討するため，群（サークル群，教室群）×時間（ベースライン，追跡調査）の2要因分散分析をおこない，多重比較検定にはBonferroni法を用いた．また，群×時間（交互作用）の効果量，時間による主効果の効果量を示すため，偏η2を算出した．偏η2の値は，0.01以上0.06未満は小さい，0.06以上0.14未満が中程度，0.14以上が大きいと判断した．効果量の算出を除く全ての統計処理には，IBM SPSS Statistics 21 for Windowsを用い，危険率は5％とした．Ⅲ．結果対象者の基本属性および下肢機能を表2に示す．ベースラインにおける各群の年齢，身? 138 ?