ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci.　第64巻　第2号　通巻 第292号

概要

教育医学 J.Educ.Health Sci.　第64巻　第2号　通巻 第292号

小木曽加奈子，樋田小百合，渡邊美幸，山下科子，久留弥保平均評価スコアの範囲は2.85～4.75であった．そのため，中央値であった4.00未満は「重要性に欠ける」と判断し，該当する質問項目を削除することとした．また，四分位偏差としては，1.0以上を合意の程度が低いと判断し，該当する質問項目を削除することとした．上記の2つの過程を経て62質問項目とした．なお，〈日常生活機能を高める：10項目〉〈患者・家族とともに転帰先の選択：15項目〉〈多職種協働：15項目〉〈認知力に応じた関わり：13項目〉〈医療的ケアの継続：9項目〉から成る．なお，62質問項目のすべての四分位偏差は，0.50であった．2）2回目デルファイ法の結果1回目と同様に検討した結果，各領域の平均評価スコアの範囲は3.50～4.38であった．そのため，中央値であった4.00未満は「重要性に欠ける」と判断し，削除することとした．なお上記の過程を経て36質問項目とした．なお，〈日常生活機能を高める：7項目〉〈患者・家族とともに転帰先の選択：8項目〉〈多職種協働：10項目〉〈認知力に応じた関わり：6項目〉〈医療的ケアの継続：5項目〉から成った．3）3回目デルファイ法の結果2回目の結果をもとに質問項目に関するディスカッションを行い，質問紙に具体的な文言の修正のコメントを得た．各領域の平均評価スコアの範囲は3.74～4.88であった．その後，高齢者ケア領域の教育・研究者間でそのコメントを踏まえ，質問内容及び表現を分かりやすい文言へ修正し，最終的に36質問項目で収束した．表2には第3回デルファイ法にて文言の修正を行った個所を下線ハイライトで示した．Ⅳ．考察入院によって活動の制限が強いられ，高齢者においては，不活発な日々の療養生活により，ADL（activities of daily living）の低下を招くこととなる．認知症では，認知障害だけでなく複雑なADLの早期からの障害が注目されるようになってきた4）．ADLの具体的な実施状況を把握し，ADLの低下をできるだけ防ぐ〈日常生活機能を高める〉ために意図的な介入が求められる．ADLの中でも排泄に関わることは重要であり，入院前の排泄状況を目標としてケアを重ねることが求められる．多職種で生活機能を評価すれば，自然と職種ごとの役割も明確になる7)．それぞれの立場から認知症高齢患者の生活機能を高める支援を行うこととなる．しかし，入院前の日常生活機能を維持することは難しく，佐方ら18)はADLや認知症が悪化するにつれて，施設入所等の可能性が高くなることが示された，と述べている．家族の介護力を鑑みながら，〈患者・家族とともに転帰先の選択〉を考えていくことが必要であるが，看護師としては，認知症高齢患者の立場に立ち，患者本人の思いに心を傾け，退院支援・退院調整をすすめていくことが必要になる．2015（平成27）年度に実施された介護保険サービスにおける認知症高齢者へのサービス9）提供に関する実態調査研究事業によると，施設・居住系サービスのうち，介護保険3施設（介護療養型医療施設，介護老人保健施設，介護老人福祉施設）では，認知機能障害，IADL（Instrumental Activity of Daily Living）障害，ADL障害について重度の利用者が多い傾向であった，ことが明らかになっている．そのため，日常生活機能を高める意図的な介入と退院に向けては，病院内外の〈多職種協働〉が求められる．村井ら12）は，ADL／IADLは生活そのものであるため，それを支えるには，一つの職種が何かをすればよいということにはならない，と述べている．ケアを担当する看護職だけではなく，医師，理学療法士，作業療法士，介護支援専門員，薬剤師，介護職などの多職種で，それぞれの強みを活かしながら，支援をしていくことが重要である．認知症の方や家族が住み慣れた地域で安心して生活を継続するためには，必要な医療・介護サービスやインフォーマルサービスが切れ目なく提供され，地域に住む人や働く人からも温かく見守られ，支えられる必要がある20）．そのため，さまざまな方面から〈認知力に応じ? 195 ?