ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号
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教育医学 J.Educ.Health Sci. 第64巻 第2号 通巻 第292号
樋田小百合,平澤園子,熊田ますみ利用者との関わりから写真教材を個人回想法として活用し,良い刺激が与えられると想定していたと思われる.3.高齢者看護学実習における写真教材の活用の効果写真教材の活用をすることで,学生は,生きてきた時代背景の異なる利用者との《話題づくり》や《会話が弾む》など【学生・利用者双方のコミュニケーションの活性化】が図れた11)という効果が得られた.鈴木は,回想法は昔の思い出を語り合い,共感しながら心の安定を図るケアであると述べている.また,写真を使った回想法の実践を推奨し,高齢者への全般的な効果に他者との交流能力の向上を挙げている.このように利用者が,写真を見ることで昔の思い出が思い出され,自然と自ら話されることが増え,コミュニケーションが豊かになったと判断する.また,学生においても,写真教材を利用者に提示し興味を示された写真について,事前学習のレポートを参考にしながら利用者との話題が共有でき活発なコミュニケーションが図れたと考える.写真を活用した回想法は,高齢者と学生の双方のコミュニケーションを促す手段として有9)効であると報告している松本と同様の結果を示した.また,写真教材を活用することにより【利用者の生きてきた生活や時代背景を含めた対象理解】が得られ,学生自身への教育効果が示唆された.これも,生活写真である写真教材を活用することで,前述のように学生は利用者との交流が図れることから,利用者と時代背景を共通認識でき,利用者が経験してきた生活の語りから生活背景をよりイメージし利用者への理解が深まったと考えられる.今後は,対象理解が深まったことを具体的にどのように看護展開に活かしていったのか詳細に調査していく必要がある.さらに,高齢者にとって写真教材は《興味を示す》反応から《視覚での刺激となる》こと,利用者が発する言葉や表情から《回想する機会となる》と実感し,【利用者の回想・興味を引き出すことによる刺激】として利用者自身への効果が確認できた.回想法は,脳の活性化につながることから,近年,介護予防や認知症の予防対策として注目されている11).また,五感としての視覚への刺激から興味・関心を引き出し,利用者の懐かしむ姿や表情の変化などから,快の刺激となると捉えていたと考える.「認知症であっても長期記憶はしっかりしていることから,当時のことを思い出し表情の変化を見ることができた」というように,学生は利用者本来の姿を発見でき,その人らしさを垣間見る場面に出会えたことから,刺激が図れることを再認識できたと思われる.これらのように,回想法を利用した写真教材の活用は,学生・利用者双方に効果が得られることが示唆された.今後も高齢者看護学実習において写真教材を活用していきたい.Ⅴ.結論学生が,高齢者の生きてきた時代背景を理解すること及び高齢者とのコミュニケーションに活用するために行った演習における学びと写真教材を,臨地実習でどのように活用していきたいかを明らかにする.さらに,学生が臨地実習において実際に写真教材を活用したことはどのような効果をもたらすのかを調査した結果,以下の結論を得た.1.学生が考える写真教材の実習での活用目的として,【写真教材をコミュニケーション手段としたい】【利用者の理解を深めたい】【利用者と良好な関係を築きたい】【回想法の活用により良い刺激として関わりたい】の4つのカテゴリーが抽出された2.実習における写真教材の活用による効果は,学生・利用者双方の効果として【学生・利用者双方のコミュニケーションの活性化】が抽出され,利用者への効果として【利用者の回想・興味を引き出すことによる刺激】,学生への効果として【利用者の生きてきた生活や時代背景を含めた対象理解】の3つのカテゴリーが抽出された.3.学生にとって,高齢者とのコミュニケー? 165 ?