ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号
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教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号
林陵平,吉田拓矢,苅山靖加重量の増加に伴って発揮される力は増大するのに対して,キャッチ局面では付加重量が増加しても発揮される力の大きさは変化しないことが報告されている.本研究における地面反力の結果をみると(Fig. 2),NormalおよびQuickのどちらにおいても付加重量間に差は認められなかった.このために,地面反力の結果をみると,クリーンのキャッチ局面において発揮される力の大きさについては,NormalおよびQuickどちらにおいても,付加重量の大きさに依存しないことが考えられる.また,NormalとQuickにおける地面反力の関係をみると(Fig 3),全ての付加重量において多くの対象者がQuick側に位置付いていることが認められた.このことは,NormalとQuickにおける力発揮の関係を考慮した場合,Quickの試技の方がNormalの試技と比較した場合に,より大きな力を発揮することができる可能性のあることを示す結果である.これらのことから,できるだけ大きな力を短時間に発揮する能力が要求される種目を専門とする者がクリーンのキャッチ動作をトレーニング手段として用いる場合には,キャッチ動作を素早く遂行した方がより専門的なトレーニング手段になる可能性のあることが考えられる.クリーンのキャッチ局面における下肢3関節の負荷特性をプル局面と比較した場合,下肢3関節の中でも特に膝関節および足関節に関与する筋群がエキセントリックな筋収縮によって大きな力やパワーを発揮していること4)が報告されている.下肢3関節の力・パワー発揮の大きさについて,膝関節および足関節に着目すると,1RMに対する60%および90%の付加重量において,Quickにおける関節トルクおよびトルクパワーがNormalと比較して有意に大きいことが認められた(Fig.4).また,キャッチ動作中の下肢筋群の収縮様式に着目すると,関節トルクおよびトルクパワーの関係から,下肢筋群は主にエキセントリックな筋の収縮様式によって動作を遂行していたことが推察できる(Fig. 1およびFig.4).このために,1RMの60%以上と比較的重い付加重量を用いて素早いキャッチ動作を行った場合には,通常のキャッチ動作を行った際と同様に,下肢3関節の中でも多く動員される膝関節および足関節周りに介在する筋群がエキセントリックな筋収縮によって,より大きな力やパワーを発揮していることが明らかとなった.これらのことから,クリーンのキャッチ動作をトレーニング手段として用いる場合には,動作を素早く行った方が通常の速度で行った場合よりも力・パワー発揮が大きいことが認められた.さらに,素早いキャッチ動作を行う際には,1RMに対する60%以上とある程度重い付加重量を用いることによって下肢に対してより大きな力やパワーを与えることができると考えられる.クリーンのキャッチ動作は,各種ジャンプ運動における着地動作と動作様式が類似していることが報告されている4).リバウンドジャンプを対象として,着地動作におけるキネマティクスとキネティクスの関係について検討21)した先行研究では,足部が地面に接地する直前に膝関節を瞬時に屈曲させた状態で着地動作を行うことによって,踏切中における膝関節の屈曲から伸展への切り返し動作を素早く行うことができ,大きな運動エネルギーを短時間に受け止めることが可能となることを報告している.このことを踏まえて,本研究ではキャッチ動作中における膝関節角度の変化に着目し,Quickにおける力・パワー発揮がNormalと比較して大きかった要因について検討していく.全ての付加重量において,着地瞬間における膝関節角度(K1)はQuickの方がNormalと比較して小さいことが認められたのに対して,膝関節の最大屈曲角度(K2)はNormalとQuickの間には有意な差が認められなかった(Fig. 5).これに加えて,キャッチ局面における膝関節角度の変化量(ΔK)をみると(Fig. 5),1RMに対する90%を除き,全ての付加重量においてQuickにおける変化量がNormalと比較して有意に小さいことが認められた.これらの結果を考慮すると,素早いキャッチ動作を行った場合には通常のキャッチ動作を行った場合と比較して,キャッチ動作が開始される以前の局面において,膝? 301 ?