ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号
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教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号
加速局面と最大スピード局面における幼児の疾走能力の特性た.この結果から,成人と同様に幼児でも,加速局面を速く走るほど最大スピード局面での疾走速度も速くなること,そして加速から最大スピードに向けてピッチは減りながらもストライドを増大させて疾走することが明ら8)かとなった.篠原と前田は,低学年の児童に比べて高学年の児童では,加速・疾走・維持の各局面におけるストライドが有意に長い一方,ピッチは学年間でほぼ同程度か,高学年の方がやや低い傾向にあることを報告している.こうした先行研究と本研究の結果が一致することから,幼児が疾走する際の局面構成やピッチおよびストライドの変容は成人や児童と同様であり,幼児期には成人と同様の基本的な疾走様式を獲得していることが示唆された.発育期の疾走能力に多大な影響を与える要因としては身長の増大が挙げられる1).有川ら1)は,小学1年生から6年生の男児を対象に,疾走速度とストライドが身長の増大に伴って直線的に向上する一方,ピッチは身長の増大とは関係しないことを報告している.本研究でも,幼児の身長は,加速および最大スピードの両局面において疾走速度やストライドと中程度の相関関係を示した一方,ピッチとの相関関係は認められなかった.したがって,幼児においても身長の増大がストライドの増大をもたらし,疾走速度の向上を引き超すことが示唆された.ピッチとストライドは疾走速度を決定する2大要因であるが,成人期のみならず児童期でも疾走速度の増大はピッチではなくストライドの増大によることが知られている1,7).他方,幼児期は未だ基本的な疾走様式が定着せず,その能力が著しく変化している時期であり,疾走能力とピッチおよびストライドの関係性は不明な点が多い.そこで本研究では,年中児,年長児,成人を対象に加速および最大スピードの両局面における疾走速度とピッチおよびストライドの相関関係を検討した.その結果,全ての群の両局面において疾走速度とストライドに極めて強い正の相関関係が認められた(図1).その一方,全ての群の両局面において疾走速度とピッチには相関関係が認められなかった.本研究で得られた結果は,児童期の疾走能力を対象とした先行研究の結果と一致している.すなわち,有川ら1)は,小学校1年生から6年生を対象に疾走速度とストライドおよびピッチとの関係を検討した結果,ストライドの増大に伴って疾走速度は直線的に増加した一方,ピッチには疾走速度との関係がないことを報告している.信岡ら5)は,ストライドについて,同年齢における最大速度の個人差だけでなく,年齢の違いから発達レベルが異なると推測される学年間の最大速度の違いも説明する要因であることを示7)している.斉藤と伊藤は,2歳から12歳に至るまでの疾走速度の増大は,形態的な発達(下肢長の増加にともなってストライドが増大する)と機能的な発達(下肢長が増加しても同じピッチを維持し,下肢長の増加による体質量と重量負荷の増大に対してさらにピッチが増加する)によるものであると示している.以上のような先行研究や本研究の結果から,幼児期における疾走速度の向上は,児童期や成人期と同様にピッチよりもストライドの増大による影響が強いことが明らかとなった.また本研究では,年中児と年長児を対象に,加速局面と最大スピード局面の間で疾走速度とストライドの相関係数を比較した結果,有意差は認められなかった.この結果は,幼児期の疾走様相において,最大スピード局面だけでなく加速局面においてもストライドの増大によって疾走速度が向上することを示唆している.これまで,児童期などの疾走速度とストライドの関係については,最大スピード局面のみが対象とされてきたが1),本研究において幼児期の加速局面においても疾走速度とストライドが強く相関することが示されたことは,非常に興味深い.しかしながら,本研究の加速局面で求めたストライドは,15m区間の平均速度を区間中間付近のピッチで除して算出しているため,ストライドの厳密性としては課題が残る.今後,幼児の加速局面における疾走速度とストライドとの関係性をより明らかにしていくためには,ストライド? 338 ?