ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号

樊孟,松岡弘記,稲葉泰嗣,加治木政伸,吉村真美,松本孝朗にかけて88.5%増加した.片足スクワット回数では左足だけが介入前(11.9±1.7回)から介入後(15.9±0.7回)にかけて33.6%増加したと報告している.本研究では,片足スクワット回数に関して,カンフー体操群は左足が介入前(11.6±5.5回)から介入後(17.3±7.0回)にかけて49.1%増加し,右足が介入前(11.9±4.2回)から介入後(17.8±5.8回)にかけて49.6%増加した.ラケットスポーツ群は左足が介入前(11.4±4.8回)から介入後(16.4±6.2回)にかけて43.9%増加し,右足が介入前(11.4±4.2回)から介入後(15.4±7.3回)にかけて35.1%増加した.よって,本研究では小田ら21)の研究と比較して,運動実施時間は短いが,片足スクワット回数に関して,カンフー体操,ラケットスポーツのいずれも8式太極拳(1回90分間,週1回,12週間)と同程度の効果が得られた.金ら9)によると,揺れる床面(Neuro Com社製イクイテストシステム)の上で参加者に24式太極拳を1回90分,週1回(週1回の太極拳教室での練習と週2回以上の自習練習),5ヶ月間実施した結果,10m歩行速度と立位体前屈について何も運動をしなかった対照群との間に有意な差が認められ,太極拳群の10m歩行速度は,介入前(6.61±0.75秒)から介入後(5.95±0.67秒)にかけて10%減少した.立位体前屈は,介入前(6.90±10.64cm)から介入後(12.33±6.41cm)にかけて78.3%増加した.本研究では,柔軟性を判断する種目として,金ら9)の立位体前屈と異なる長座体前屈の測定を行った.長座体前屈に関して,カンフー体操群が介入前(37.1±15.3cm)から介入後(40.8±13.8cm)にかけて10%増加し,ラケットスポーツ群は介入前(34.9±5.4cm)から介入後(38.1±6.4cm)にかけて9.2%増加した.本研究では,6週間にわたってカンフー体操とラケットスポーツを実施することで,背筋力や下肢筋力,柔軟性に好ましい変化が認められた.本研究は金ら9)の研究と比較して,運動実施時間はかなり短いが,金ら9)の24式太極拳(1回90分間,週1回,5ヶ月間)と同程度の効果が得られた.平衡機能検査においては,重心動揺計を用いた検査が広く普及している25,27).本研究における重心動揺については,開眼及び閉眼条件のいずれにおいても交互作用が認められなかった.しかし,閉眼条件の左右動揺平均中心変位にのみ主効果が認められ,カンフー体操群(介入前0.21±0.57cm,介入後?0.07±0.49cm),ラケットスポーツ群(介入前0.23±0.77cm,介入後0.01±0.80cm)ともに介入前と比較して介入後に有意に減少した.先行研究にお28)いて山本は,年齢が増すにつれて重心動揺は前後方向よりも左右方向への揺れが増加すると述べている.Greenspanら3)は,側方へ転倒した場合,大腿骨頸部骨折など,歩行に重要な箇所の骨折の発生頻度が,他の方向に転倒するよりも高いことを報告している.本研究ではカンフー体操とラケットスポーツを行うことで左右方向への平衡機能に好ましい変化が認められた.カンフー体操,ラケットスポーツともに側方への転倒を予防するトレーニングになりうるものと期待される.また,側方への転倒が大腿骨骨折などの健康寿命に大きな影響を与える要因となるという観点から見れば,この二つの運動は,健康寿命の延伸に関しても有益であろう.本研究では閉眼片足立ちの左足に交互作用が認められた.介入前のラケットスポーツ群の値が8.0±8.3秒,カンフー体操群が10.1±9.1秒に対して,介入後のラケットスポーツ群の値が4.5±1.4秒,カンフー体操群が15.6±9.3秒と介入後にラケットスポーツ群の値が減少し,カンフー体操群の値が増加したことで,介入後にカンフー体操群とラケットスポーツ群の間に大きな差が生じた.これまでに様々な中高齢者用の運動プログラムの効果が報告されている1,5,6,17).森山ら17)は高齢者を対象として,卓球競技における運動負荷量や障害が少なく転倒予防にも効果的なプログラム(卓球用新プログラム)を開発し18),このプログラムを著者や他の指導者が実施しても同じ効果を提供できるかという客観性について検討した.森山ら17)の研究では本研究と同じ平衡性・バランス能力を必要とする種目として閉? 329 ?