ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号
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教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第4号 通巻 第290号
介護老人保健施設の看護職の職務の継続と認知症ケアの検討;介護老人保健施設の看護職版職務満足度評価尺度とBPSDサポート尺度を用いてⅠ.はじめにわが国における人口の高齢化は著しく上昇しており,少子高齢化が進行する中で,人々の健康寿命に対する関心が増しているものの,介護が必要な高齢者は確実に今後も増加することが予測される.高齢化の進展に伴う老人慢性疾患の増加により疾病構造が変化し,医療ニーズについては,病気と共存しながら,生活の質(quality of life,以下QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まってきている.一方で,介護ニーズについても,医療ニーズを併せ持つ重度の要介護者や認知症高齢者が増加するなど,医療及び介護の連携の必要性はこれまで以上に高まってきている12).しかし,医療費適正化の総合的な推進として,医療ニーズがある場合でも医療機関での長期入院は難しくなっている.また,家族形態の変化や介護力などにより在宅での生活を継続することが困難である場合も多く,高齢者施設への入所を余儀なくされるという現実も存在する.そのため,医療ニーズに対応でき認知症ケアを実践できる人材確保が重要となり,その中で看護職の役割の変化や職務の範疇も変化が生じている.高齢者施設においても医療的ケアや認知症ケアが求められている社会的背景により,2012年4月1日から「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則等の一部を改11)正する省令」により,介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員等による喀痰吸引等の実施が可能になり,介護福祉士養成課程に医療的ケアの領域が新設された.しかし,これらの法改正による効果が出現するためには時間がかかることが予想される.そのため,増大する医療ニーズを抱える認知症高齢者のケアにおいては看護職に求められる役割も増えている.高齢者施設の中でも介護老人保健施設(以下,老健)は特別養護老人ホーム(以下,特養)と異なり,365日24時間看護職が配置されており,介護職や理学療法士(Physical Therapist,以下,PT)や作業療法士(Occupational Therapist,以下,OT)など他職種と協働しながら日常生活援助を行っている.そのような中で,医療ニーズを併せ持つ重度の要介護者や認知症高齢者に対しては,看護職がリーダシップをとりながらケアを行う現状がある.2015年の調査では,老健の定員100人あたり平均職員数として,看護職は9.7人であり13),入所定員100人当たり9人という人員基準を満たしてはいるものの十分であるとは言い難い.老健は特養とは異なり,生活の場でありながら医療やリハビリテーションも行うという機能を持っている.老健では,ベッドサイドケアの多くは,看護職と介護職が協働して行っており,従来,医療的ケアとして看護職が行っていたケアも介護職が実施できるようになったため,看護職は直接医療的ケアを行う職務以外に,介護職に対する教育的支援も担うこととなり,それらの業務の変化は看護職としての職務に対する思いにも影響を与えると考える.老健の看護職が認識する「看護職の役割」としては,「高齢者と家族の希望に沿った生き方の支援」「高齢者の日々の生活に即した健康管理」「関係職種・機関との連携と調整」「介護職と相互理解と協力」が示されている32)が,老健の看護職の職務に対する思いは,前述した社会背景の変化に伴い変わり続けていくであろう.一方,看護職の確保や定着(recruitand retain)に成功している病院(Magnethospital)が注目され,医療機関における人材の確保と定着のために,病院に勤務する看護15)師の職務満足測定尺度の開発もされている.それには,「仕事に対する肯定的感情」「上司からの適切な支援」「働きやすい労働環境」「職場での自らの存在意義」の4因子が示されている.老健では介護職員としての人材の定着と確保に向けての取り組みは実施されているが,今後は看護職にも着目していくことが求められる.老健では看護職の人員配置も少なく,病院とは異なる事情があるため,その状況を考慮した修正版の職務満足に関する尺度が開発されている25).老健の特性に応じた看護職の職務満足を測定できる指標の活用が望まれ,老健におけるケア実践への応用が必要である.老健では,生活に密着したケアを行うとい? 306 ?