ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

平澤園子,樋田小百合,青木郁子援助に取り入れる】,【高齢者のもてる力を看護援助に取り入れることができない】の3つのカテゴリが抽出された(表1).以下,カテゴリは【】,サブカテゴリは《》で示す.主な発言内容については文章の意味合いを()で補足した.1.【高齢者のもてる力を把握する】看護過程展開のためには情報収集が欠かせない.学生が主に情報源として活用するカルテの記載内容は疾患や治療に関することが中心であり,身体機能や認知機能に関する具体的な記述や,日常生活援助を実施した際の反応は記載されていないことが多い.そこで学生はカルテからだけでは不足しがちな情報を,日常生活援助を行いながら収集することになる.その際には《高齢者の身体機能に関する情報を収集する》ことと,《高齢者の認知機能に関する情報を収集する》ことを行っていた.この過程では,高齢者の《その人らしさに目を向ける》ことが欠かせないため,学生は自分達だけでは収集しきれない情報を,《他者からの助言を対象理解に反映させる》ことで補っていた.2.【高齢者のもてる力を看護援助に取り入れる】学生は自分自身が把握した《高齢者のできることを看護援助に取り入れる》だけでなく,《高齢者のできる可能性のあることを看護援助に取り入れる》ことも行っていた.さらに高齢者との日々の関わりを通じて把握した,《高齢者が望むよい状態を看護援助に取り入れる》ようにしていた.3.【高齢者のもてる力を看護援助に取り入れることができない】学生が高齢者の望むよい状態を知りたいと望んでも,自分自身の思いを具体的に語る高齢者は少ない.学生が高齢者の消極的な言葉にどう対応していいか分からず《高齢者の思いを引き出せない》ことがあった.さらに,日常生活援助を行いながら情報を収集する場合にも,高齢者のできることやできる可能性のあることを探すことができず,《できないという思い込みから脱却できない》でいたこともあった.Ⅵ.考察高齢者の日常生活動作には,身体的要因,精神的要因,環境的要因が影響している.日常生活援助の中で,【高齢者のもてる力を把握する】ためには,動作開始から完了までのどこに不具合が生じているか詳細に観察し,分析する必要がある.多くの医療機関で電子カルテ化が進み,日常生活援助での介助量は全介助,一部介助など簡略化した内容が記載されていることが多い.そのため,学生は高齢者に直接援助を提供する段階になってから,対象理解に必要な具体的かつ個別性のある情報を得ることになる.そのうち,身体機能に関する情報をもとに対象を把握することは比較的容易であるが,認知機能に関する情報,特に対象の判断力や思考力に関する情報からの対象を把握することは困難となる傾向がある.その理由として,これら認知機能に関する情報は客観的に評価することが難しく,高齢者の言葉にこれら要素が含まれていたとしても,認知機能低下によるものか,元々の性格や気質によるものかが見極められないためと考えられる.さらに認知症と診断されていない高齢者を受け持った場合,対象の認知機能の低下を疑えなかったことも要因の一つであると考える.【高齢者のもてる力を看護援助に取り入れる】ことについては,学生は高齢者が実際にできることだけでなく,できる可能性のあることにも目を向け,看護援助に取り入れていた.高齢者の《その人らしさに目を向ける》ようにしていたのは,高齢者のもてる力に含まれる,生活史の中で培った心理社会的な『強み』という側面にも着目したためである.実習前に行うペーパー事例による看護過程演習において,問題解決型思考ではなく,目標志向型思考による看護過程を学習したことによ? 277 ?