ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

高齢者のもてる力の看護実践への活用-高齢者看護学実習における看護学生の意識に焦点をあてて-目標志向型思考による看護過程の考え方を意識し,研究者間で検討を重ねることで客観性の確保に努めた.6.用語の定義もてる力:本研究ではもてる力を,障害を受けた場合に残された機能を指す残存機能に留まらず,「生活史の中で培った心理社会的な『強み』や人間の成熟に関連した『力』」6)を含む,「個々の高齢者自身の内に宿る生きる力,生活していく力,また表には現れていない秘めたる力などあらゆる力」2)とした.Ⅳ.倫理的配慮研究参加は自由意思であり協力・同意の有無による成績への不利益はないこと,得られた結果は学会で発表することを口頭および文書で説明した.研究協力の同意書提出により意思確認を行った.インタビュー内容を逐語録に起こす際には,個人を特定しうる情報を削除した.なお,本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認(承認番号:H27?01号)を受けて実施した.Ⅴ.研究結果インタビュー調査に同意が得られた学生は6名であり,うちペアで患者を受け持った学生が2名含まれていた.逐語録から学生が高齢者のもてる力をどのように看護実践の場で活用したかを分析した結果,【高齢者のもてる力を把握する】,【高齢者のもてる力を看護表1看護学生における高齢者のもてる力の看護実践の場で活用カテゴリーサブカテゴリー主な発言内容(一部抜粋)高齢者のもてる力を把握する高齢者のもてる力を看護援助に取り入れる高齢者のもてる力を看護援助に取り入れることができない高齢者の身体機能に関する情報を収集する高齢者の認知機能に関する情報を収集するその人らしさに目を向ける食事の様子を観察したら,嚥下障害もなく,自力で経口摂取可能ということが分かりました腰痛のため歩行ができないので,車椅子で移動して,(浴室の)補助の椅子に座って入浴していました左手を動かすことができませんでしたが,うがいの時には右手を使って自分で水含んで,吐きだすことまでできていました食事を食べたことを忘れて,「私,まだご飯もらってない」って,ご飯あとにすぐあとに言っていましたあまり会話をしなくて大人しい人と思っていたのだけど,すごく話をされる日と全然しゃべらない日があって,気分のムラがあったと思いいます車椅子の乗り降りの際に,ブレーキのかけ忘れが頻回にある方でした生きてきた時代が違いますし,価値観について話されたときに,ああ,そういう考え方もあるなあっていう,すごく尊敬できる方でした農業されていた方で畑の話になるとすごく話をされて,あと若い時は乗馬してたっていう話きいたりして,若いころは今とは全然違っていたのが分かりました焼き肉やBBQが好きで,社交的な人だったって奥さんから聞いていたんですリハビリでは平行棒で歩行されていたんですけど,病棟では車椅子を利用している方でした,理学療法士の方の話では,リハビリでは杖歩行できるまでが目標ということでした他者から助言を対象理解に反映させる(自分では)全く話ができない人っていうふうに理解していたけど,看護師さんから会話可能であると情報をもらって,援助の時に実際に自分の目でも確認して,これまでの考えが単なる思い込みだったんだって分かったんです高齢者のできることを看護援助に取り入れる高齢者のできる可能性のあることを看護援助に取り入れる清拭の際には残存機能を考えて,私がタオルを渡すことで,上肢とか胸とかおなかとかはご自分で拭いてもらいましたリハビリも兼ねて病棟内を車椅子自走で1周してもらうっていう形にして,患者さんが今持っている力でできるだけ行ってもらうように援助していきましたタオルを渡せば上肢や胸腹部は自分で拭けていました,(患者さん自身も)「やります」っておっしゃるので,できるところは残存機能を考えて,ご自身で行ってもらっていました最初は何もできないと思っていたんですけど,寝返りうつ時に声をかけたら柵につかまってもらえたんです便意・尿意がなく,おむつ内で排泄している方だったんですけど,大体の排泄パターンが分かってきて,それに合わせてトイレに誘導するようにしたら,トイレで排泄できるようになったんです他の学生がいるとうれしそうに会話するので,(レクリエーションへの参加も)他の人と一緒だったらできるのかなって思って,他の学生にも協力してもらって一緒にレクリエーションをやったら参加していただけたんです(入浴の時など)できることはなるべく自分でやりたいという姿勢があって,(学生や看護師など援助者高齢者が望むに)頼りたいっていうのはあまりなかったよい状態を看護援助に取り入れる普段はゆっくり座るようにしているよとか,腰を痛めないようにしているよって,自分の体のことをよく分かっているというのがありました高齢者の思いを引き出せないできないという思い込みから脱却できない60歳になってやりたいことがなくなったって聞いた,でも,どうしてやらなくなったかって言うのは聞かなかった,今なら(そのことを聞くことも大切だと)分かるけど,実習中には考えられなかった不眠がある患者さんに昼間できる活動を取り入れようと思ってご本人にお聞きしたら,「なんでもいいよ」とか「もう年だから」と言われてそれ以上関われなかったけど,他の人の意見を聞いて試していけばよかった車椅子には自分で乗り降りできる方でしたが,便意や尿意を感じない方だったので,おむつ内で排泄してしまっていたんです多分昔はいろいろできたのに,今できないっていうことがかわいそうだと思った,今できることはなにかってことまでは,実習中には考えることができませんでした? 276 ?