ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第3号 通巻 第289号

危険予知トレーニングの手法を導入した児童に対する水難事故防止学習に関する事例的研究れ,児童はイラスト中の人物に焦点化する傾向が覗えた.対象児童全員が「石(もしくは岩)に乗る児童」に関する記述をした.一方,環境要因は最も多い「流れ」に関する記述ですら出現率6.6%であった.また,環境要因で記述があったのは「流れ」「深さ」「コケ」「水の色」等であった.「水温」のような表現が難しい内容は何らかの説明を加えることも考えられる.イラスト中の子どもがそれぞれ危険な行動をとっているため,周りの環境に意識が及びにくかったことが推察された.表3は,河川のイラスト(図1)を見て「危険をさけるための対策は,どのようなことがありますか」という質問に対して得られた児童のワークシートの記載内容をまとめた.児童の記載内容は,行動要因が85.7%を占めた.記述数が最も多かったのは,「乗る」であり,「危険」に対する記述と同様「石もしくは岩に乗っている児童」の行動に対する対策が多かった.次いで,「衣類」が挙がった.服装に関する指摘が見られたことは,着衣泳の影響を受けていることが推察される.記述例に「?しない」という行動そのものを禁止する言葉が見られるように,「河川に潜む危険」というよりも「危険行為への注意喚起」という思考に向かったことが推察された.「川遊び」では,河川に行くことや遊ぶことをやめるという記述がみられた.危険を避け,事故を起こさないことで安全に楽しく遊ぶ,という授業のねらいからはずれ,河川=危険な場所という思考に至った可能性がある.児童の記載内容について危険回避の方策別に分類したところ,危険行為をそのまま禁止する「危険対処型」が最も多く(63.3%),次いで,危険な行為の代わりとなる何かを提示する「置換型」(25.5%),事前配慮の上,安全に遊ぼうとする「安全対策型」(11.2%)であった.危険行為を禁止するだけでなく,代わりを示したり,事前に安全に配慮する「置換型」や「安全配慮型」に思考を向かせることを企図すれ表3河川のイラスト「見つけた危険をさけるための対策は,どのようなことがありますか」に対する児童の記載内容n=22要因キーワード記述数出現率(%)記述例1記述例2行動乗る2727.6乗らない近寄らない行動衣類1414.3はだしで入らない履物を考える行動投げる1010.2石を投げないボールにする行動同伴99.2子どもだけで遊ばない親と一緒に行く行動川遊び77.1河へ行かない安全なところに行く環境流れ77.1はやいところに近づかない速い流れから離れて遊ぶ環境深さ66.1深いところへいかない深さに気を付ける行動死角66.1人と離れない人から見えるところで遊ぶ行動安全対策55.1危険だという看板を立てておく危険なところは立ち入り禁止に行動飛び降り44.1飛び降りない飛び込まない行動マナー22.0マナーを守る―環境コケ11.0コケをさけて遊ぶ―合計98―――表4海のイラスト「小学生が遊んでいるイラストの中には,どのような危険がありますか」に対する児童の記載内容要因キーワード記述数出現率(%)記述例1記述例2行動睡眠2126.9寝ている人がいる浮き輪から抜ける行動制限区域1823.1ロープの外に出ている外は深くて溺れてしまう行動用具使用1215.4危険なものを持っている周りに刺さる環境砂浜1114.1ごみがいっぱいある危険なものがある行動走行67.7走っている何かにつまづいてケガをする行動素潜り33.8深く潜ろうとしている溺れそう行動泳法22.6周りをみずに泳いでいる頭を上げずに泳ぐとぶつかる行動保護者22.6親がいない注意する人がいない環境波11.3高いなみがみえる波に体を奪われる環境生物11.3クラゲがいるかもしれない―行動はだし11.3何もはいていない―合計78―――n=22? 270 ?