ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

ページ
28/58

このページは 教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号 の電子ブックに掲載されている28ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

高齢ボランティアが運営する運動サークルへの参加が地域在住女性高齢者の下肢機能に与える影響能は維持に止まった可能性がある.運動量や運動強度が漸進的に増加するようプログラムの内容を定期的に見直し,対象者の身体機能水準に合わせたプログラムが提供されることで,SSEサークルの効果がより大きくなり,下肢機能の向上が見込めるかもしれない.運動サークルへ参加することで得られる身体機能への効果は,運動指導をおこなう高齢ボランティアの指導技術の影響を少なからず受ける可能性がある.複数の先行研究では,運動指導に精通した専門家が地域在住高齢者に対して,SSEを主運動とする3ヵ月間の運動介入をおこなった結果,TUGだけでなく?回椅子立ち上がり時間や全身選択反応時間など複数のパフォーマンステストが向上したと報告している12,19,2?).これらの研究と本研究では調査期間や被指導者の特性が異なり単純比較することはできないが,専門家と高齢ボランティアとでは被指導高齢者への介入効果に違いがあるかもしれない.今後は,両者の指導の違いを明らかにすると共に,それらが被指導者の身体機能に与える影響を検討する必要がある.本研究にはいくつかの限界がある.マッチング前の両群の基本属性を比較すると,サークル群は年齢が若く,下肢機能の水準が高かった.本研究では下肢機能総合得点を用いて,サークル群を基準にコントロール群のデータをマッチングさせたため,対象者は年齢が若く,下肢機能水準が高い集団に偏った可能性がある.今後は男性の対象者も含めて幅広い年齢,身体機能水準の者を対象として検討を進める必要がある.また,本研究では対象者の運動習慣や身体活動量を調査していないため,これらを考慮した検討が求められる.最後に,運動サークルは長期的に参加できる通いの場となることが望まれているが,本研究の追跡期間は約1年と短かった.今後は,追跡期間を延ばして検討すると共に,SSE以外の運動を用いたサークルにも着目することや,認知機能や心理状態といったアウトカムを設定することで,介護予防活動としての運動サークルの有効性を検証する必要がある.Ⅴ.結語高齢ボランティアが運営するSSEサークルへの約1年間の継続参加は,地域在住女性高齢者の加齢による起居移動動作能力の低下を抑制する可能性がある.引き続き,運動サークルの有効性に関するエビデンスを蓄積し,通いの場の1つとして運動サークルの普及に取り組んでいく必要がある.謝辞本研究の調査実施やSSEサークルに関するデータ収集にご協力戴いた笠間市職員の皆様,笠間市スクエアステップ・リーダー会の皆様に深く感謝申し上げます.また,本研究は,文部科学省科学研究費補助金(基盤研究B)「運動支援ボランティア育成を柱とした包括的介護予防システムの構築とその波及効果(課題番号:2?282213,研究代表者:大藏倫博)」による助成を受けて実施されました.利益相反本研究において,開示すべき利益相反はない.文献1)Guralnik JM, Ferrucci L, Pieper CF, LeveilleSG, Markides KS, Ostir GV, Studenski S,Berkman LF and Wallace RB (2000) Lowerextremity function and subsequent disability:consistency across studies, predictive models,and value of gait speed alone comparedwith the short physical performance battery.J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 55(4), M221-231.2)Guralnik JM, Ferrucci L, Simonsick EM,Salive ME and Wallace RB (1995) Lowerextremityfunction in persons over the age of70 years as a predictor of subsequent disability.N Engl J Med, 332(9), 556-561.? 192 ?