ブックタイトル教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

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概要

教育医学 J.Educ.Health Sci. 第63巻 第2号 通巻 第288号

学習動機づけが後の学習結果に及ぼす効果:大学生を対象とした自己決定理論に基づく検討一定の効果を及ぼすものであり,自己決定性が低い類型は適応感を低減させ,高い類型は増加させる可能性が示された.また,この適応感を低減させる類型は無動機づけと統制的動機づけ,増加させる類型が自律的動機づけに相当したことから,学習動機づけの効果に対する視点からは,統制的動機づけと自律的動機づけの2類型が内発的動機づけと外発的動機づけの区分よりも意義があると考えられた.さらに,学習動機づけの効果の強弱は適応感の側面によって異なっており,学習に限られた適応感の側面よりも,学習に限られない自尊感情では,学習動機づけが及ぼす効果が弱い可能性が示された.一方で,本研究には限界と残された課題がある.適応あるいは適応感には多様な側面があることは既述の通りであり,関連する要因も多い.本研究では取り上げなかった学業成19,24)績,同級生との関係といった側面を含め,学習動機づけの効果の媒介要因や調整要因についても,今後検討の必要があるだろう.学習動機づけと適応感との影響過程は複雑である可能性があることから,例えば本研究で検討した因果関係とは異なるものとして,適応感が学習動機づけに与える影響も確認する必要があるだろう.また,本研究では大学生を対象に,4週間後の学習動機づけの効果を分析したが,児童や生徒など対象者を広げ,さらに長期間の効果の検討も望まれよう.こうした課題が認められながらも,本研究では学習動機づけと学習関連適応感の関係に関する有益な知見を得ることができた.大学生における適応の向上を図るためにも,学習動機づけの理解を進展させ,その適切な類型の促進と抑制を的確に実現する方途の探求へ繋げていくことが必要である.そのために,本研究の知見を活かしながら,さらに有益な知識を得るための検討が求められる.本研究に関して利益相反はない.文1)Chatzisarantis NL, Hagger MS, Biddle SJ,Smith B and Wang JC (2003) A meta-analysisof perceived locus of causality in exercise,sport, and physical education contexts. Journalof Sport and Exercise Psychology, 25(3),284-306.2)Deci EL and Ryan RM (2012) Motivation,personality, and development within embeddedsocial contexts: An overview of self-determinationtheory. In RM Ryan (Ed.), TheOxford handbook of human motivation, pp.85-107, Oxford University Press, Oxford, UK.3)速水敏彦(1995)外発と内発の間に位置する達成動機づけ,心理学評論,38(2),171?193.4)速水敏彦,田畑治,吉田俊和(1996)総合人間科の実践による学習動機づけの変化,名古屋大学教育学部紀要(教育心理学科),(43),23?35.5)林日出男(2006)自己決定理論に基づく大学生用英語学習動機づけ尺度の作成:既存尺度との比較考察,日本テスト学会研究紀要,(9),117?128.6)伊田勝憲(2015)「擬似内発的動機づけ」の概念化可能性を探る:自律的動機づけ形成のデュアルプロセスモデル構築,静岡大学教育学部研究報告人文・社会・自然科学篇,(65),139?150.7)鹿毛雅治(2013)「学習意欲の理論:動機づけの教育心理学」,金子書房,東京.8)Ng JYY, Ntoumanis N, Thogersen-NtoumaniC, Deci EL, Ryan RM, Duda JL and WilliamsGC (2012) Self-determination theory appliedto health contexts: A meta-analysis. Perspectiveson Psychological Science, 7(4), 325-340.9)岡田涼,中谷素之(2006)動機づけスタイルが課題への興味に及ぼす影響:自己決定理論の枠組みから,教育心理学研究,54(1),1?11.10)大久保智生(2005)青年の学校への適応感とその規定要因:青年用適応感尺度の作成と学校別の検討,教育心理学研究,53(3),307?319.11)大西恭子(2016)学業領域固有の知覚された無気力の探索的研究,教育心理学研究,64(3),340?351.献? 184 ?